2012年4月20日金曜日

WSPA犬管理プログラム [WEB版] - みやざき・市民オンブズマン


野良犬をなくすための実用ガイド

この冊子は、政府機関、地方自治体、動物対策の専門家が、効果的な最新の野良犬対策についての理解を深め、それを実現していくのに役立ててもらうために、世界動物保護協会(WSPA)が作成しました。

この冊子は、1990年に、世界保健機構(WHO)と世界動物保護協会(WSPA)が共同出版した「犬の頭数管理のためのガイドライン」を補足する目的で作られました。野良犬対策を立てるにあたり、従来から用いられてきた有用な手法や、必要な施設、道具、作業手順についての具体的な参考情報を含めた実際的な詳細情報を盛り込んでいます。この冊子で説明する基礎情報の中には、「犬の頭数管理のためのガイドライン」から内容を引用したものもあります。

更に詳細な情報が必要な場合や、ご相談は、WSPAまでご連絡下さい。

 WSPA 世界動物保護協会 89 Albert Embankment, London, SE1 7TP, UK Tel +44 (0) 20 7793 0540 Fax +44 (0) 20 7793 0208 e-mail: petrespect@wspa.org.uk web: www.wspa-international.org 

訳者 林裕美子


目次

付録

このパンフレットは、犬の対策についてのものです。猫対策についての情報をご希望の方は、「猫の飼い方と繁殖対策」という冊子をWSPAで用意しています。

人と犬の相互依存の関係は、1万2千年以上前のユーラシア大陸で始まった言われています。オオカミが昔の人の野営地や居住地に近づいて餌をもらううちに、差し迫った危険を人に知らせたり、やがては野生動物の狩を手伝うようになり、人に歓迎される存在になりました。このようにして犬の家畜化が実現し、人と動物のかけがえのない絆が築かれました。

犬を飼うことで人が受ける恩恵は数え切れません。犬は、人の作業を補助する動物として、さまざまな用途に用いられます。例えば、牧用犬、そり犬、番犬としても役に立ちます。盲目や聾唖といった障害を持つ人の介助犬としても活躍します。ペットとして飼えば、人の相手をし、人が運動するのを促し、変化に富んだ楽しいライフスタイルを提供し、世話をするという刺激を人に与えることによって、人の孤独や憂鬱をいやしてくれます。また、人の関心を外に向けさせたり、犬といれば危険がないという安心感を与えたり、直接触れることができる心地よさを人に与えることによって、不安感を解消します。 犬の存在が心理学的にも生理学的にも飼い主に恩恵をもたらすことは、さまざまな科学的研究で確認されています。ストレスが解消されると、免疫機能がうまく働くようになることはよく知られています。そばに寄り添う犬がいると人の情緒を安定させるという理由から、ホスピスや病院が犬を飼い始めました。

犬を飼いならし、人の役に立つ仕事をさせ、その代わりに人が犬を保護してきたことにより、人と犬の強い絆が作られてきました。ところが今日、犬を過剰に繁殖させて数を増やしたのに世話をせずに捨てるという行為が、この強い絆に暗い影を落としています。これは、犬を大きな不幸に陥れ、人間社会の健全な発達も妨げます。政府機関や地方自治体の多くは、このような捨て犬が引き起こす問題に直面し、簡単な解決法としてまとめて殺処分にするという方法をとりました。しかし、この殺処分という方法には終わりがなく、毎年毎年くり返すだけのものであるということがわかってきました。なお悪いことに、野良犬の数を一時的に減らすと、残った野良犬の生存チャンスを行政当局が増やしてやることになります。野良犬が「一� ��された」地域には周辺から野良犬が移住してきて、もし狂犬病などの病気を持った犬が移住してくれば、感染が広がることになります。 このような「捕獲して殺す」方針にのっとって実際に捕まえられた犬をみてみると、飼い主の家からあまり離れていない場所で捕獲されることが多いようです。飼い主は、このような捕獲に憤慨し、もし殺処分になってしまった場合には、行政当局に対して激しい抗議をするのが普通です。軋轢を起こさずに犬の数を減らすためには、地域社会や動物愛護団体の支持をとりつけなければなりません。 地域社会の余剰犬の問題を解決するときに、捕獲して殺すのが最も効果的だとは、決して考えてはいけません。犬の過剰繁殖という問題の根本的な解決には何の役にも立たないからです。野良犬をなくすためには余剰な犬を取り除くだけではすまないことが、やっと認識されてきました。犬の登録、避妊・去勢、市民の啓発を含む、長期的な視野に立った積極的な介入が必要不可欠です。

国によっては、公共の場で飼い主と一緒にいない犬、つながれていない犬、首輪と識別タグをつけていない犬を法的に野良犬と定めています。また別の国では、首輪をつけずに飼い主の家の付近を放し飼いにされ、夜になれば餌をあさりに遠出させるような場合でも飼い犬です。このような両極端の中間的な存在として、公共の場で放し飼いにされたまま飼い主を待っている犬、迷子になった犬、自ら家出をした犬、捨て犬がいます。気候が暖かければ、雌の野良犬が産んだ仔犬も生き延びることができます。親犬の元の飼い主が見つからなかったり、新しい飼い主のもとに引き取られなければ、このような仔犬は飼い主がいない状態で成長することになり、凶暴な野生の成犬になることもあります。このような野良犬は捕獲が難しく、病� ��を伝播させることもありますが、生存率が低く大きな問題になることはあまりありません。 野良犬駆除計画では、飼い主がいる犬といない犬を区別し、それぞれに応じた扱いを策定しなければなりません。また、飼い主が責任を持って犬を管理するという根本の問題を解決するための市民の啓発活動とも連動していなければなりません。

多くの行政組織が人道的な野良犬対策を積極的に行なおうとしない背景には、費用の問題があります。しかしながら、効果が期待できないような対策を施すことによって生じる被害 – 例えば、交通事故、犬の咬傷事故、保健衛生上の問題(狂犬病など)、捕獲して殺処分にする費用、野生動物や家畜がこうむる被害 – などにかかる費用を考えると、対策をとらないことによって節約することは意味がないことがわかります。 イギリスで1996年に野良犬対策にかかった関連費用は、警察が野良犬に対処するのに要した費用が1500万ポンド、地方自治体が動物捕獲要員にかけた費用が1100万~1600万ポンド、交通事故に関連した被害が1800万ポンド、犬によるケガの治療費として900万ポンド、犬による家畜の被害が200万ポンドにものぼります。ところが重要なことは、動物保護員にかける費用は増加したにもかかわらず、このような費用総額は8年前の額より総額で1000万ポンド減少しているということです。効率の良い対策に投資した対価といえるでしょう。 将来的な見通しを持った対策に要した費用は、犬を登録させて登録料を徴収することで補填できます。避妊・去勢を推し進めるために、避妊去勢手術を行なった犬の登録料は引き下げ、収入の少ない年金生活者などの低所得者にはそれなりの便宜をはかります。

効果的な対策を行なうには、包括的でかつ将来性のある計画をたてる必要があります。このような計画には、現時点での飼い主および将来的に飼い主になる可能性のある人達への飼い主教育、飼い犬の出産制限、飼い主がいない犬の保護環境の整備、登録と標識着用の義務づけ、ブリーダーやペット販売業者の認可制度などが含まれます。そして、この計画を効果的に運用していくことが肝要になります。このような対策を成功へ導くためにはどこに重点を置いたらよいかを詳しくみていきます。また、このような対策について法律でどのように規定していくのがよいかを付録2に示します。

地方自治体(市町村)は、ペットを所有することに伴う責任についての啓発を行ない、市民の責任意識を高める努力をします。また、可能な限り、動物愛護団体や地元の獣医を巻き込んでいきます。重要な点は、避妊・去勢の促進、ペット動物の必要性を説くこと、ペットを世話し責任を負うことを理解してもらうことです。すでにペットを飼っている飼い主が責任を持って飼うよう意識の向上を図ることが目的の一つです。衝動的にペットを飼い始めることのないように啓発していくことも必要です。 また、啓発用の資料には、飼い主には法的な責任があることも強調しておきます。 啓発活動には、広く配布できるような様々な印刷物やパフレットの作成も含まれます(例えば、動物病院、図書館、交番、犬の登録センター、犬の雑誌へ掲載、動物愛護団体やドッグブリードクラブの会員に配布)。既存の啓発用資料でよければ、WSPAに申し込めば入手できます。図書館やドッグショーなどで展示できる啓発用の資料も用意します。また機会があれば、マスメディアに活動を取り上げてもらうことも必要です。 犬を捨てようとしたり世話をしないなどの問題が起きたときには、実際に動物を保護する担当者が啓発活動をします。保護された野良犬の元の飼い主がみつかったような場合は、保護担当者が啓発活動を行なう絶好の機会です。

犬の登録と標識着用は、野良犬対策を成功へ導くためには必須条件です。狂犬病予防注射の義務付けのような保健衛生上の対策は、犬の登録と標識着用が徹底していないとうまく運用できません。 登録は個々の犬の記録をとる制度で、飼い主の詳細とともに登録簿が作成されます。どのような登録制度が一番有効かは、国によって違います。中心になる登録用コンピューターがあり、国中からそこにアクセスできるようにする場合もあります。もし大きい国ならば、地方ごとの認識コードを設定するシステムにすればいいでしょう。犬には、登録簿に記録された標識あるいは番号を半永久的に身につけさせます。この標識を入れ墨にすれば、一目でわかり、読めなくなることもありません。マイクロチップが用いられる場合は、挿入されている事がわかるように肉眼で確認できる印を付けておきます(例えば、MやXの文字を耳の内側か太ももの内側に入れ墨にする)。 犬の標識については簡単な説明を付録4に紹介しています。 この半永久的な標識に加えて、戸外では常に首輪と標識札(もしくは識別タグ)の着用を義務付けます。この札には、飼い主の名前、住所、電話番号などの情報を記入します。首輪が盗まれることが多い国では、安いプラスチック製のテープの首輪を使用するようにすると盗難を防ぐ事ができるでしょう。飼い主についての情報を記入した札は、紐でくくりつけるか、テープで貼り付けます。犬の予防接種の状況が一目で識別できるように、札に色コードをつけることもできます(毎年色を変える)。 犬を一時的に預かってもらう場合(旅行に出るときなど)は、万一犬が逃げてしまっても返してもらえるように、一時的に預ける場所の住所などを首輪に取り付けます。 登録と標識着用のこのような義務づけを導入する場合は、同時に、ペットを捨てたときに重い罰則を課すように規定します。 

犬の登録料(課金)は、避妊・去勢をした犬は低い額に設定します。そうすると避妊や去勢を促進できます。また、年金生活者のように一定の「困窮」状態にある場合や、飼い主がいない犬の里親になることを了解した人も免除します。課金することにしたときは、その方針が市民にしっかり浸透するように、前もって入念な広報活動をします。そうすれば、犬を衝動的に購入することや、課金を払わなければならないとわかると一度犬を捨てて後に別の犬を入手するような事態を防ぐことができます。現在所有する犬についての課金を次の年に延納できるようにすることもできます。こうすれば、課金されるからと慌てて犬を捨てることを防ぐことができます。このような課金収入は、野良犬対策や啓発活動に還元されるようにしなけれ� ��いけません。そして、課金制度を登録制度や標識着用と連動させていれば、課金逃れが一目瞭然でわかります。犬を登録するときに、標識札を行政側から配布するようにすれば、比較的簡単に実施することができます。

避妊・去勢は、あらゆる手段で奨励しなければなりません。たとえば、啓発活動、優遇制度(避妊・去勢した犬への課金を低くする)、避妊・去勢手術への補助金の交付などがあります。避妊・去勢手術への補助金制度は地方自治体が策定しますが、動物医療関係者、地元の獣医師、動物保護団体とも連携するのが理想的です。 動物保護団体と地元の獣医師の利害が明らかに異なることから、避妊・去勢推進計画が難しいこともあります。獣医師とは、このような計画に関与することの意義を話し合い、動物保護団体には、このような計画を推進したときに個人経営の獣医師が被るであろう損失を理解してもらうようにします。 また、動物保護団体は、保護した犬を里親に引き渡すときには、必ず避妊・去勢を済ませておきます。地方自治体が保護した野良犬も同様で、保護施設から人手にわたるときまでに避妊・去勢をすませます。 野良犬対策をすすめるにあたり、安く避妊・去勢手術を提供できれば、目を見張る効果をあげることができます。実際に最近行なわれた避妊・去勢キャンペーンで、この方法が野良犬対策にいかに有効であるかがはっきり示されました。スコットランドのダンディー州での実績の報告を付録7に示します。 避妊・去勢手術をおこなう適齢期や最もよい手術方法については、獣医によって考え方が違います。この点については、「避妊・去勢に関するFECAVAの方針(1998年11月)」にまとめられています。付録8を参照してください。手術をする最終的な目的が動物の個体数制限ならば、早期の避妊・去勢には明白な利点があるというのが一致した見解です。

どのような地域でも野良犬の「収容能力」があり、野良犬の数は、この収容能力に達するまで増え続けるということが一般に知られています。この「収容能力」は、食べ物の量と、ねぐらとして利用できる空間の多少によって決まります。ある地域の「収容能力」を下げる一つの方法としては、清掃を徹底して餌となる食糧を減らすことです。特に、市場、食肉処理場、道沿いにある飲食店あるいは飲食店全般、ゴミ捨て場、工場、人が居住しない場所に気を配ります。

ペットが増えすぎた大きな原因の一つとして、見境のない交配が挙げられます。営利的なブリーダーをすべて認可制にして監視することは、とても重要です。認可を得るためには、厳しい動物福祉の条件を満たさなければならないようにします(収容施設、世話、相手をしてやる、獣医の監督、運動、出産頻度などについて)。一般家庭でも、仔犬の引き取り手が未定のままで繁殖させる場合には、認可をとらせるようにします。これは、許可をとったブリーダーだけが、公に(あるいは仲介業者や販売業者を通して)仔犬を販売できるようにするということです。犬や仔犬を販売した人は、そのたびに、犬を購入した人の詳細を認可・登録を担当する関連部局に届け出なければなりません。こうすれば、登録状況なども常に新しい情報に� ��新できます。

仲介業者やペットショップなどの販売業者も、すべて認可制にして監視下に置きます。認可を受けた販売業者は、認可された繁殖業者からしか仔犬や成犬を購入できなくなるので、登録を担当する関連部局は、繁殖・販売ネットワークを通じて犬の所在を追跡でき、頭数を把握できます。犬の販売は、地下鉄、街中の広場や市場のような公共の場では禁止します。認可を受けるには、動物福祉の基準(収容施設、世話、相手をしてやる、獣医の監督などについて)を満たさないといけません。 認可を出すための事務経費や、制度運用の経費をまかなうために、認可料を徴収します。


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制度は効率よく運用されなければなりませんが、同時に人道的な配慮がなされていなければなりません。認可や登録、認可されたブリーダーや販売業者に対する立ち入り検査、記録の保持といった日常的な業務のほかにも、啓発活動、避妊・去勢の推進、野犬捕獲員の配置などは、地方自治体が担うことになるでしょう。記録の集中的な管理(特に、集中管理された犬の登録簿)や、その記録照会といった依頼にも対応しなければなりません。 野良犬対策では、野犬捕獲員の仕事が基本になります。担当者を選ぶときには、動物を扱った経験、動物が好きかどうか、人格を考慮します。実際に市民と接しながら啓発活動を行なうという重要な役割を直接担うのが野犬捕獲員です。この仕事に不向きな人を配置してしまったことが原因で、捕獲員の役割が不当な評価を受けることがないようにすることが重要です。 犬が捕獲され、まずは個別に飼育しなければならない場合のためにの適切な犬舎は、地方自治体が用意する必要があるでしょう。このような犬舎を建設する際に考慮すべきいくつかのポイントと、簡単な図面を付録5に示します。必要ならば、WSPAが相談を受けます。詳細な図面の作成の援助もします。付録5には、従来の「長屋型犬舎」に代わる、飼育労力が少なくてすむ新しい「円形犬舎」の説明もしてあります。 野犬捕獲員が使用する専用車も慎重に選びます。運転席と隔絶された後部には、広くて換気がきいたスペースを確保します。そして、いつでも使えるだけの台数を用意し、車の整備も怠らないようにします。このような専用車に必要な装備を付録3に示します。 犬舎も専用車も、病気の感染予防を念頭に置いて設計・清掃をします。ウイルス性呼吸器疾患の拡大を防ぐことのできる犬舎や専用車については、付録5を参考にしてください。 捕獲は動物を思いやった方法で行ないますが、それには根気が必要で、動物の行動についての知識も必要です。 野犬捕獲員は、動物の扱いについての充分な訓練を受け、狂暴な犬でもどんな犬にもうまく対処できるようにします。犬の捕獲方法や、扱いが難しい犬や危害を及ぼす犬への対処の仕方を付録6に紹介します。 捕獲された犬が飼い犬の場合、犬を飼い主に返して、飼い主の責任についての教育を施します。野良犬センター(犬の収容施設)に収容された犬については、個々の犬について詳細なデータを記録します。飼い主が犬を放棄したら、その飼い主についての情報も記録します。できれば、写真も添付します。飼い主が飼い犬を探すときには、この詳細なデータの中から探します。収容されていた犬が飼い主に引き取られる時には、引き渡す前に罰金を徴収します(捕獲員が犬の保護に費やした労力やその他の諸経費として)。 飼い主のいない犬を保管しておく収容施設については、飼い主が犬を探しに来れるように、詳細な施設情報を市民に広く知らせます。飼い主が納得がいくまで探せるよう、犬は、最低でも10日間は一匹ずつ隔離保管します。収容されている間は、居心地の良い空間を用意し、餌と水を与えます。 収容期間が終わったら、里親探しのために地元の動物保護団体に犬を渡します。もしそのような民間団体がなければ、野犬捕獲員自身が里親を見つけるためにあらゆる手段を講じます。安楽死は、里親がみつからなかった場合の最終的な手段として考えます。この場合、ペントバルビタール・ナトリウム(バルビツール酸塩)のように、苦痛を与えない方法を用いることが肝要です。 しかし、どんな野良犬対策を立てるにしても、安楽死という選択肢を最後には残しておきます。収容施設や保管施設で預かる犬の数が定数を超えてはいけません。超えると、動物福祉の面で新たな問題が生じます。 孤立した集落などに少数の野良犬や野犬がいて、特に問題をおこすわけでもなく、里親がみつかる可能性も低い場合には、捕獲して予防接種や寄生虫駆除を行ない、避妊去勢した後に放してやるのも一つの方法です。このような場合には、病気の犬や凶暴な犬だけは安楽死させる必要があります。 犬の糞の後始末を飼い主に義務づける法律の整備は考慮に値します。犬の糞の後始末をすることを規定している条例を作るなら(例えば、特定の公園や繁華街について)、野犬捕獲員には条例にのっとって動けるような権限を与えます。飼い犬の糞の後始末をしない飼い主を、野犬捕獲員が取り締まれるようにします。 このような取り締まりで野犬捕獲員が徴収した罰金は、野良犬対策や啓発活動に還元されます。野犬捕獲員が行なう啓発活動は、地域の強い協力と連携したものでなければいけません。新たに野犬捕獲員の制度を導入すると、制度を浸透させるために、少なくとも最初のうちは捕獲員と市民が相互理解できるような話し合いなどが必要になる場合もあります。このような新しい制度の導入や、それが市民に受け入れられるようにするにあたり、動物保護団体と連絡をとることは有効でしょう。また、野犬捕獲員には、飼い主からペットを没収して動物虐待や世話の放棄をした飼い主を告訴する権限を与えるようにします。

強制力の強い防止対策なら必ず効果があがります。スウェーデンには、犬の登録、標識着用、納税を義務づけた法律のよい施行例があります。この法律によって、飼い主がいない犬の90%に飼い主がみつかるようになり、ストックホルムに唯一ある犬の収容施設では、50ある檻がいっぱいになることはありません。このため、有料の「ドッグホテル」としても利用できます。 スウェーデンの各市町村にある専門委員会では、それぞれに年間に納める犬税を規定していて、登録ナンバーを警察が確認できるように、犬は首輪につけていなければなりません。動物病院には、この登録料から、毎年交付金が支給されます。スウェーデン愛犬クラブは、標識方法として耳に入れ墨を施すことを薦めています。 街なかでは、犬を自由に走り回らせるのは禁止で、つないでいなければなりません。また、犬の排泄は飼い主に責任があり、糞をしたら後始末をしなければなりません。 野良犬がみつかると、通常は警察か発見者がつかまえて地元の犬の保護施設に連れて行きます。飼い主が現れるまで、そこで保管されます。飼い主が現れない健康な犬は、その保護施設で里親を探しますが、たいていは、犬を飼いたい人が順番を待っています。 国レベルで有効な対策が講じられていなくても、市町村レベルで導入した野良犬対策で効果があがることもあります。ロンドンの郊外にあるウォルサム・フォレスト対策委員会では、非常に有効な野良犬捕獲制度を運用しています。その概要を付録1に示します。



背景

ウォルサム・フォレスト対策委員会(ロンドン郊外にある地方自治体の公的機関)は、3967ヘクタールの面積に9万世帯21万2千人が住む人口密集地域にサービスを提供しています。現在のところ、イギリス政府は国レベルの犬の登録制度を有しておらず、野良犬への対処は、国や政府の機関ではなく地方自治体に責任がゆだねられています。国レベルの登録制度がないことによる不都合にも関わらず、ウォルサム・フォレスト協議会の野良犬対策は成功をおさめています。

犬の登録と責任の所在

1990年に制定されたイギリスの環境保護法のもとでは、野良犬の捕獲と収容は地方自治体が責任を負うことになっています。この法のもとで野犬捕獲員は公務員として認められており、自治体に雇用されて野良犬を取り扱う仕事をします。野良犬が警察に連れてこられた場合は、警察も野良犬の受け入れを行ないます。 1981年にできた動物保健法の一環として1992年に制定された犬対策法は、飼い主の名前と住所が書かれているタグかプレートを犬の首輪につけずに犬を公道を歩かせる事を違法としました。

野犬捕獲員

ウォルサム・フォレストには、三人の野犬捕獲員がいます。いずれも動物関係の仕事を経験したことがあり、動物の扱いや世話が得意であるということで選ばれました。 3人は、この仕事に関係のある様々な講習を受けています。以下がその講習の一例です。

  • 野犬捕獲員コース
  • 犬および猫の管理
  • マイクロチップ挿入コース
  • 野犬捕獲員上級コース
  • 犬の習性
これらの講習は,イギリスのウッドグリーン動物保護施設にある動物福祉大学が提供しています。 また、公園や公共の草地で犬の糞の後始末を監視し啓発活動を行なう公園専門の犬対策職員も二人います。

野良犬のとらえかた

野良犬を捕獲するときには食べ物と忍耐強さがものをいいます!ウォルサム・フォレストの3人の野犬捕獲員は無線で連絡を取り合い、必要であれば後方支援を頼みます。彼らには、十分な装備を揃えた天井の高い運搬用のフォードのバンが三台与えられています。それぞれのバンに装備されている備品は、以下のとおりです。

  • 特別仕様のスリップリード
  • 標準グラスパー
  • 保護用長手袋
  • 餌、餌入れ容器
  • 通常の檻
  • 野生猫トラップ
  • 柄長グラスパー
  • 捕獲網
  • 口輪
  • 折りたたみ式の檻
  • かご
  • 狂犬病保護スーツ
犬やキツネ用トラップと、危害を及ぼす犬用の保護スーツもあります。 最近までは、次のような3週毎のシフトで、運用されていました。
 1週目	午前	7:00	-	午後 3:15 2週目	午前	8:15	-	午後 4:30 3週目	午前	11:00	-	午後 7:15 
こうすれば1日12時間の対応が可能になり、残業時間も減ります。市民が予想もしないような早朝や夕方遅くにパトロールすることも可能です。このような通常シフトに加えて、24時間体制で緊急事態に備えます。財政的な問題のため、現在ウォルサム・フォレストでは、対応時間を午前9時から午前5時までに短縮することを余儀なくされ、緊急時の残業も制限されています。  

犬の収容期間は?飼い主はどのように犬の行方を探せばいいのでしょうか?

捕獲された野良犬は、市町村が管理する犬の収容施設に7日間保管されます。飼い主が引き取りに来なければ、8日目に、新たな飼い主を見つけるために、動物保護団体の施設に移されます。飼い主は、警察や対策委員会を通じて自分の犬を探します。自治体当局に保護されていた飼い犬を引き取るときには、当局が費やした費用のすべてと、犬が逃げたことに対する罰金として法令で定めている25ポンドを支払います。 現在は、犬の保護費として一日5ポンドが請求され、保護されたすべての犬が受ける獣医による健康チェックと予防接種の費用は罰金の25ポンドに含まれます。

自治体とボランティア団体との関係

ボランティア団体との関係は良好です。野犬捕獲員は常にRSPCA(動物虐待防止王立協会)と連絡をとり、動物虐待が見つかれば調査員と一緒になって対応します。野犬捕獲員が法廷で証言することもよくあります。

啓発や飼い主責任の周知のために自治体が果たす役割

自治体では、地元の学校や市民グループの集まりに野犬捕獲員を派遣し、飼い主の責任を教えたり、捕獲員の職務内容を説明して、啓発活動に大きな役割を果たします。 毎年、「全国ペット週間」を企画し、動物福祉に関係する様々な団体の資金調達を助けたり、飼い主責任の普及を図ります。全国でペットショーやパレードなどを開催します。

危険な犬に関する法律

自治体の野犬捕獲員はみな、1991年の「危険な犬に関する法律」に基づいて権限を与えられた公務員です。このため、公共の場で危険とみなされた場合には、どんな犬でも捕獲することができます。また、この法律に違反したとみなされた犬も、すべて捕獲できます。

犬をつなぐことに関する法律

現在のイギリスには、犬をつなぐよう規定した国の法律はありません。しかし、「事務所兼自宅に関する条項」では、特定の公園、遊園地、休養施設で犬をつなぐことを盛り込んだ条例を自治体が作成することを認めています。また、「交通に関する法律」に基づいて公道で犬をつなぐよう行政命令を出すことができます。本対策委員会は、このような行政命令を出すよう関係省庁に働きかけています。

清潔

ウォルサムフォレストでは、公園、公共の草地、公道における犬の糞に関する条例を作成しています。 公道についての条例では、飼い主が犬に歩道や道端の草地に糞をさせることを不法行為であると規定します。公園や公共の草地に適用される条例は次のようなものになります。

  • 子供の遊び場―犬の侵入が完全に禁止されます。
  • 観賞用の公園―犬はつなぎ、糞の後始末をします。
  • 公共の草地―犬が糞をしたら後始末します。



一般的な事項

  • ペットを飼っている人やペットの世話をする人は、ペットの保健衛生と動物福祉についての責任を負います。
  • ペットを飼っている人やペットの世話をする人は、ペットの生理や習性を考慮した居所を用意し、世話をし、注意を払ってやります。具体的には、適切な餌、水、住処を提供し、運動をさせ、交流を図ります。
  • 家畜化していない動物をペットとして飼ってはいけません。禁止するために厳しい規定を設けたり、飼ってもよい動物のリストをつくり(規定に)、リストに載っていない動物の飼育は許可制(あるいは認可制)にするのもいいでしょう。認可は、例外的な場合にのみ認めるようにします。たとえば、野生動物を自然に返すことができず、保護区域で飼う場合などです。
  • ペットを不必要に嫌がらせたり、苦痛を与えたりしてはいけません。
  • 病気やケガをしている場合はすぐに治療を施します。必要ならば、獣医の診断を受けます。苦痛がひどくて安楽死が必要な場合は、経験のある担当者が即座に行ない、痛みや苦しみを最小限にします。

野良犬になるのを防止する手段

  • 飼い犬を捨ててはいけません。
  • 犬と猫(捨てられた場所で問題を引き起こす動物はすべて)には、持続的な痛みや苦痛を伴わないマイクロチップの挿入や入れ墨のような適切な長持ちする標識を施します。各個体ごとに違う番号を割り当て、その番号で飼い主や管理者の連絡先もわかるようにして集中管理します。

ペットのヨーロッパ内(実際は世界中でもかまわないわけですが)の移動が容易になるにつれて識別番号が足りなくならないようにし、国が変わっても同じ番号が使えるよう各国間の登録システムの整合性をはかります。そのような国際的なシステムを実現するには、現在のところマイクロチップを用いるのが最も有効です。

  • 犬は、飼い主もしくは管理者の連絡先を明記した首輪を常につけるよう義務付けます。
  • 新たに犬を飼うときには犬税を支払うような制度を導入します。課税制度を導入する前に充分な社会的認知が得られるようにします。年金生活者などの特定の人達は免除してもいいでしょう。徴収した税金は、野良犬対策や啓発活動に還元されます。
  • 犬や猫の無計画な繁殖を防ぐために、避妊・去勢を奨励します。避妊や去勢を行なった犬の課税額は下げてもいいでしょう。
  • ケガや病気をした野良犬を発見した人は飼い主を探しますが、もし見つからなければ、すぐに関係当局に届け出ます。
  • 飼い主がいない犬や標識をつけていない犬を捕獲する必要があると判断された場合は、動物の肉体的・心理的苦痛が最小限になるような方法で捕獲します。
  • 野良犬が捕獲されて施設に収容されるときは、以上のような規定に準じた扱いをします。
  • 引き取り手のない動物を処分する必要があるときには、常にこの付録2の46-48番に従って行ないます。

情報提供と啓発活動

  • 関係当局は、「ペットを飼育する人の責任」について情報提供や啓発活動を行ないます。このような啓発では、衝動的にペットを飼うことを戒め、ペットを飼うことにより発生する義務や責任を強調し、避妊・去勢をするよう勧めます。

ペットの利用制限

  • 闘犬を計画したり見物することは禁止します。
  • 荷物を引かせる目的で犬を使用することは禁止します。
  • 動物を賞品にすることは禁止します。
  • 食品、毛皮、革の生産のようなペット以外の他の商業目的のためにペット動物を繁殖させることは禁止します。(専門性の高い科学研究のための系統維持などは特例とする必要があります) 
  • 飼い主がみつからず引き取り手のない動物を科学研究に使ってはいけません。
  • 動物を、速さ、力、耐久力を競う競技に使うことは、関係当局から特別許可がおりない限り禁止されます(例えば、動物の健康や福祉に害がない競馬などのような特定のイベントには許可を出します)。このような競技は事後に再審査をし、動物の健康や福祉に問題がある場合には(例えばグレイハウンド・レース)許可を取り消します。許可がおりた場合には、以下のような一定の基準を設けて、条件を満たすよう同意させます。
  • 参加する動物の年齢や健康条件に関する規定
  • 動物の参加頻度に関する規定
  • 競技に立ち会う獣医に関する規定
  • 競技場のコースの建設や障害物の設定に関する規定
  • 特定の動物種の使用禁止
  • 競技に出場する動物には、行動や気性に影響を与えるどんな薬物も服用させてはいけません(ドーピング)。
  • ペット動物の健康や福祉を害するような訓練をさせてはいけません。特に、不必要な苦痛を与える人為的な手段によって本来の能力を上回ることを期待する訓練を強制してはいけません。
  • 動物に苦痛を与えるようなショー、宣伝、あるいはこれと同等の目的の催しに動物を使用してはいけません。

外科的な処置や手術

  • ペット動物に治療目的でない「切除」を施してはいけません。ただし、社会的・福祉的理由に基づく避妊・去勢と、避妊・去勢を行なった野良猫への目印のために耳の先端を切除することは奨励されます。禁止される処置としては、耳や尾の切断、爪や声帯の除去などが含まれます。これらは、FECAVAの切除に関する方針(1998年)の付録9に基づいたものです。
  • 痛みを伴う外科的処置は、すべて獣医が行ないます。ただし、処置が遅れることで動物福祉に反するような結果を招くような緊急の場合は除きます。可能な限り苦痛を和らげるようにします。
  • 関係当局は、外科的処置や類似の手術について、許容される手法、麻酔の使用方法、年齢制限などのさらに詳細な規定を定めます。
  • 動物が関係する特許取得を禁止します。
  • ペット動物に遺伝子操作を施す処置は当面は見合わせます(あるいは、厳しい制限や監視体制を伴う許可制にします。)

危害を及ぼす犬

  • 人に危害を及ぼすことが判明した品種の犬の繁殖を制限する規定を必要ならば導入します。

しかし、規制を特定の品種に限定しても、その品種を特定するのが困難であるという実際上の問題が発生して、円滑な実施が難しい場合もあります。FECAVA人に危害を及ぼす犬の取り扱いに関する方針説明書(1998年)の付録10を参照。

登録と標識着用の義務づけ、公共の場での口輪の着用、避妊・去勢の義務づけ、動物輸入禁止についての規制などについて以下に述べます。


母犬はpuppieの看護を停止したときに何をすべきか

繁殖

  • 販売目的で動物を繁殖させるブリーダーや繁殖業者は、認可制にして関係当局の監視下に置きます。この制度では、繁殖させる雌犬の最低および最高年齢、および出産させる回数や間隔を規定します。飼育設備や犬の取り扱い状態に問題がない場合にだけ認可を与えます。
  • 認可されたブリーダーは、生まれた子犬についての詳細、販売や購入の記録をすべてとります。この記録は、立ち入り検査の際に閲覧できるようにしておき、必要ならば関係当局がいつでも押収できます。 
  • 特定の姿形の犬を得る目的での繁殖は、犬の健康や福祉を害する場合は禁止されます。
  • 繁殖目的で飼う犬を選ぶ人は、選んだ犬が、生まれてくる子犬や母犬の健康や動物福祉を害するような解剖学的・生理学的・行動学的な特性を持っていても、それについての責任を負います。

販売/仲介

  • ペット動物の販売や仲介をする人はすべて、認可を取り関係当局の監視を受けます。認可には、動物福祉に関して満たすべき一定の条件を規定します。
  • 認可仲介業者は、許可ブリーダーからだけペット動物を購入できます。ブリーダーの動物の販売は、このような業者を通じてではなく、直接販売するよう推奨します。
  • 認可仲介業者は、購入や販売についての詳細な記録をとり、保管しておかなければなりません。この記録は立ち入り検査の際に閲覧できるようにし、必要ならば関係当局が予告なくいつでも押収できます。
  • ペット動物の売買は、認可施設でだけ行なうことができます。施設の認可は、動物の管理状況が適切で、獣医がいて、当局の監視を受ける施設に限られます。
  • ペット動物を販売する際には、求められたら前所有者やブリーダーなど過去の経歴についての詳細を提示しなければなりません(ただし、野良犬として収容され、過去の詳細が不明の場合は除く)。
  • 16歳以下の人にペット動物を売ることはできません。

預託施設

  • ペット動物を預かる施設は認可制にし、関係当局の監視を受けます。設備や世話が不十分な施設には改善命令を出し、期限までに改善が見られない場合は、営業停止処分にします。

保護施設/避難施設

  • ペット動物の保護施設や避難施設も認可制にし、関係当局の監視を受けます。

運搬

  • ペット動物の運搬は、動物が苦痛を感じないように行ないます。運搬は、生きた動物の運搬に関する規定に準じて行ないます。

輸出/輸入

  • ペットの輸出入には、関係当局からの許可および輸出入に関する証明書が必要です。動物の輸出入に関する詳しいデータは、動物の種類ごと、輸出先、輸入先別に管理します。輸入動物の検疫体制を整えます。

殺処分/安楽死

  • ペット動物の殺処分は、獣医か他の有資格者だけが実施できます。ただし、獣医や他の有資格者が居合わせていないのに動物の苦痛を早く終わらせなければならないような緊急の場合を除きます。
  • 殺処分は、肉体的、精神的に苦痛が最小限になるようにします。用いる方法は、次のいずれかでなければなりません。
    • 瞬時に意識を失わせて死なせる方法
    • 強い一般的な麻酔をまずは投与してから、意識が戻る前に確実に死なせる方法。
  • 殺処分を実際に行なった人は、死体を何らかの方法で処分する前に、動物が確かに死んでいることを確認します。
  • 殺処分の方法として以下のものは禁止されます。
    • 溺死や他の窒息死
    • 上述の項目46にある効果が得られるような投与量や投与方法が確立されていない毒物や薬物の使用
    • あらかじめ即座に意識を失わせる処理をせずに電気ショック死

制度の運用

  • 担当する行政部局を規定し、その担当局が執り行なう職務も規定します。そして、単なるクレーム処理だけに終わらず積極的な運用ができるような手順を整えます。また、立ち入り検査の権限や罰則規定も設けます。罰則には以下のものを含みます。
    • 罰金
    • 懲役刑
    • 動物飼育禁止
    • 動物差し押さえ

倫理委員会

  • 関係当局の首長に動物福祉全般について助言するためにペット倫理委員会を設けます。検討内容としては次のようなものがあります。
    • 現行の法律およびその運用形態についての問題点
    • 必要な新しい規定
    • ペットに関して討議しなければならない新たな問題点
    • ペットに関して今後行なっていくべき調査、および関連調査
    •  
  • 倫理委員会は主要な関連団体の代表者と専門家によって構成されます。例えば、動物保護団体、獣医、科学者および学術経験者(ペットと人間とのきずなや、ペット行動学などの研究者)、ブリーダー(愛犬協会など)、動物販売業者、消費者などです。


その他の器具、消毒剤

  • 動物用長手袋
  • 腕防護用具
  • そけい部防護用具
  • 安全盾
  • 安全ヘルメット
  • 救急箱
  • 回中電灯
  • 子犬用バスケット
  • パルボウイルス消毒剤用容器
  • 漂白剤(ドメストスブリーチ)
  • パルボウイルス消毒剤

以上の物品は下記で入手できます。

 M D Components Hamelin House 211/213 High Town Road Luton Bedfordshire LU2 0BZ UK 

使用する基本的な器具、およびその評価

1) リード

普通の用途には、丈夫な紐か軽い鎖でできたものを使います。輪が締まる首輪とリードが一体になったものが最適です。実際には、犬は大半がおとなしいので、首輪部分を頭からかぶせて輪を狭め、リード端を持って誘導できます。事情が許せば、後で革の通常の首輪をとりつけてリードにつなぎます。

長所:安価であり、軽く、使いやすい。
短所:犬が噛み切ってしまう事があります。

2)犬用捕獲網

長所:犬を移動させるときに安全な距離をおくことができ、口輪の装着がしやすくなります。
短所:犬をおびえさせる形状をしており、使い方を誤ると犬の緊張を高めます。また、犬に痛みを与える場合もあり、扱いにくいという欠点があります。

3) 長手袋

長所:手を保護し、気分的な安心感が得られます。白癬などの病気を防御できます。
短所:物をつかみにくく、手入れが面倒です。

4) 檻

長所:安全に確実に犬を運搬できます。
短所:折りたたみタイプでなければ場所をとります。また、物によっては大変重く、持ち運びに不便です。掃除が面倒です。

5) 網

現場で犬を捕獲するのには、テニスネットのような長いネットが便利です。壁や柵を利用してトンネル状の誘導路をつくり、犬を檻に追い込みます。網は長さおよそ30フィート(9.15メートル)から40フィート(12.20メートル)、高さ3フィート(91.5センチ)で、建物の角や檻の入り口に片方の端を固定し、もう片方を捕獲員の車についている固定具に留めます。
長所:安全に犬を捕獲できる。
短所:もつれやすく、2人で扱わなければならない場合が多い。

6) わな

長所:餌を仕掛けて放って置けます。
短所:持ち運ぶのに複数の人員を必要とします。正しく仕掛けられないと、扉が閉まらなかったり、犬が入っていないのに扉が閉まったりします。市民の注意を引き、反感を買う場合が多いです。

7) 口輪

危害を及ぼす犬には、口輪をはめる必要があります。以下に主な3種類の口輪を紹介します。

  • 革製箱型タイプは、やや高価で犬の体格に合わせて調節ができません。また清潔に保つのが困難です。
  • 革製紐型タイプは、箱型タイプよりも大きさの調節が簡単で、衛生管理も容易です。口吻全体を覆わないので、犬が咬み付こうとできます。箱型タイプでは犬が呼吸困難になることがありますが、紐方は、その心配がありません。
  • 帯紐タイプでは、丈夫で長くて細い帯紐か、柔らかいロープが使われています。これで、自分で口輪を作ります。
長所:怪我をした犬が咬み付くのを防ぎ、犬を拘束するのに役立ちます。持ち運びに便利です。
短所:どの犬にも合うというわけではなく、特にボックスタイプは、清潔に保つのも困難です。やわらかい材質で作ってあるものは、はめ方が難しいです。きつすぎたり、唇が口輪に挟まって痛みを与える場合もあります。

どのタイプも、犬に傷を負わせることなく安全に装着され、装着したものは後で外さなければならないことを覚えておいてください。

8) 体格が小さく口吻が短い犬の口輪

適当な長さのタオルを縦に巻いて、首の周りに巻きつけるだけで十分です。口輪を使用すると窒息死する場合があります。

車両に装備するとよいもの

  • リードと首輪のセット
  • 犬捕獲器
  • 猫捕獲器
  • 猫拘束用檻
  • 犬拘束用檻
  • 担架
  • 作業用手袋
  • 防護長手袋
  • 犬用檻
  • 猫用檻
  • 懐中電灯
  • 足の付け根まである防水長靴
  • 救急箱(動物用)
  • 救急箱(人間用)
  • 顔面防具
  • 胴体防具
  • ヘルメット
  • 口輪
  • 車両の換気扇
  • 車両用信号灯
  • 車両用照明灯
  • 無線通信装置


マイクロチップ

バイオグラスに封入されたトランソポンダーは、受動的で、読み取り器から送られてくる信号で作動します。

マイクロチップの挿入



マイクロチップは、長さ14mm、幅2mmの米粒程度の大きさで、記録されているコード番号を専用の読み取り器で読み取れるように設計されています。マイクロチップ表面は特別な生体順応コーティングが施されており、1個ずつ滅菌包装されています。専用の注射器具で皮下組織に埋設します。痛みを伴わず、麻酔なしで挿入できます。埋設部位としては、肩甲骨の間か首の左側が一般的です。

生体へ異物を移植すると、副作用を起こしたり、埋設物が体内を移動する可能性があります。このため、FECAVAは、実態を把握するために副作用についての報告を受け付ける体制を導入しました。今のところ、報告数はほんのわずかです。

マイクロチップがペット用に初めて開発された当初、整合性のないシステムがいくつも導入されました。ヨーロッパにおける主要な基本タイプはFDX-A(FECAVA標準)とFDX-B(ISO標準)の二つですが、アメリカやオーストラリアを含む他の国では、他のタイプが使用されています。国際的には、現行の種々のタイプとは多システム対応読み取り器で整合性をとりながら、FDX-B(ISO)チップに全面的に移行するよう合意ができています。マイクロチップシステムを採用する際は、使用するシステムに合わせた多システム対応読み取り器を使用することが重要です。

マイクロチップを動物に埋設する時には、その犬がすでにマイクロチップで標識されていないことを確認します。これには体全体を走査する必要があり、次のような手順が推奨されます。

* マイクロチップを挿入する前にすること

  • 包装に傷がついていないこととマイクロチップの滅菌が完全であることを確認します。
  • 挿入するマイクロチップを読み取り器で走査して、コード番号が包装に書かれたものと一致することを確認します。この手順を踏めば、読み取り器が正常に機能していることの確認にもなります。
  • 犬の体全体をゆっくり、慎重に走査して、すでにマイクロチップが埋設されていないことを確認します。

* チップ挿入直後にすること

  • 犬の体を走査して、マイクロチップが定位置に収まり作動している事を確認します。
  • 関連書類に記入する ― 複数の犬に同時にマイクロチップを埋設するときには、間違いを防ぐために、先に書類に記入します。

* 追跡調査訪問

  • 定期的な検査時(予防接種など)に、マイクロチップが移動していないか、作動しているかを確認します。
  • マイクロチップの副作用、体内での移動、故障があれば、所定の用紙に記入し報告します。

入れ墨

耳の入れ墨

入れ墨は、耳か内腿に施しますが、耳をお勧めします。以下は、イギリスの全英犬登録センターが採用している耳の入れ墨についての説明です。全英犬登録センターが用いている方法は、他の国々で行なっている耳の入れ墨と同じです。

入れ墨の利点

  • 初期費用も維持費も安くて済む
    • 7mmの標準器具セット、約150ポンド/240 USドル
    • 子犬、子猫用の5mmの小型器具セット、約175ポンド/275 USドル
    • 50~60回分の入れ墨用染料、約 5ポンド/8 USドル
  • 手順が簡便 ― 入れ墨を施すのに、難しい技術を必要としません。動物の扱いに慣れている人であれば、すぐに(30分以内で)習得できます。
  • 正しく施せば、犬が死ぬまで残ります。
  • 入れ墨は肉眼で見ることができ、耳の中ならば確認が容易で、「現場」で即座に識別できます。確認するのに犬に余計な負担をかける必要もありません。
  • 読み取るための特別な装置も必要ありません。誰でも読み取ることができます。

入れ墨を施す

入れ墨を施す間は、犬に痛みを与えないために麻酔をかけるのが望ましいでしょう。仔犬よりも痛みを感じる度合いのつよい成犬では、特に推奨されます。 しかし、もし麻酔なしで入れ墨を施す場合には、口輪をはめ、犬を押さえて安心させるよう助手に手伝ってもらいます。

  • 耳たぶの内側の毛を初めに刈り取り、入れ墨用の器具が皮膚に接触しやすくします。
  • 入れ墨を施す部位を、外科消毒用アルコールを含ませた綿球でふき、古い皮膚や油分を除去し、消毒します。
  • 消毒薬が乾いたら、入れ墨用染料をその部位に塗りつけます。
  • 針をセットした入れ墨用鉗子が耳たぶの中央にくるように耳の中に入れますが、針が外耳道にたくさんあるひだの上に乗らないよう気をつけます。
  • 穿刺する瞬間には、助手に合図して犬が動かないようにしっかり抑えてもらいます。
  • 鉗子を取り出し、塗っておいた染料を入れ墨用鉗子であけた小穴にすりこみます(毛が生える方向と逆向きにすりこみます)。

入れ墨用の器具には様々な種類があり、プロの入れ墨師が使うペン型のものもあります。この場合は、標識の文字を手書きしなければなりません。 文章で書かれた手順を読んで理解しようとしても、実演を見るよりずっと長い時間がかかります。染料をすり込むまでの実際の手順は、30秒もかからないうちに終わります。

標識システムにおける必要条件

国内あるいは国内外で、個体識別に基づいた犬の登録システムを計画するときには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 偽造できない固有番号を犬に一生涯割り当てます。
  • 標識が必要なすべての犬に対応できる容量のシステムでなければいけません。もし複数の国で対応させるシステムならば、容量はそれに見合ったかなり大きなものが必要です。
  • 標識を施す手順が簡単で、犬に苦痛を与えず、安価でなければいけません。
  • どのようなシステムでも、国際的に同意が得られたものでなければいけません。
  • 運用する人のミスが起こりにくいシステムでなければなりません。

入れ墨対マイクロチップ

入れ墨は、動物標識の便利な方法として長らく利用されてきて、今でもその便利さを強調する人もいます。標識方法としていまだに有効な場合もあり、読み取るのに特別な装置を必要としないという利点もあります。 しかし、国際的な統一システムを作り上げるのに必要な条件を考えると、マイクロチップの方が適当です。

首輪標識:刻印札/刻印専用機

首輪につける金属性標識札に文字を彫る刻印機があります。市販の真鍮製の円形札に刻印専用機で標識情報を刻印すれば、一目でわかる標識を犬の首輪につけることができます。

プラスチックタグ

犬の首輪につけるプラスチック製の標識札もあります。取り扱いが簡単で、耐久性もあります。

このような首輪につける標識は下記で入手できます。

 MDC Components, 35/37 Hastings Street, Luton, Beds. LU1 5BE, UK. 


犬の収容施設を建設する際のヒント、および設計方法

WSPAが発行している「動物保護施設の設計と運用」は、犬の収容施設を建設する際の一般的な方針や運用方法を決めるときに参考になるでしょう。 しかし地方自治体は、犬舎を短期滞在用の施設として提供することしか考えていないことが多く、運用予算も低く抑えられる場合が多いでしょう。特にこのような状況下で必要なことがらに焦点をあて、取り組むべきことを以下にまとめました。 動物保護団体が運用している動物保護施設がうまく機能している場合には、自治体がこのような団体と契約を結び、野良犬を条例で定める期間収容するために、その団体の施設にある適当な犬舎を借り受けるという協力体制を作ることもできます。 自治体が独自の犬舎を用意しなければならない時は、用意した土地に施設を設計して建設するか(専用施設)、既製のプレハブ施設を建てます。使い勝手の良いプレハブ施設については、この付録で後述します。


子犬に逃亡を防止する方法

専用の犬舎を建てる場合には、単に直線の壁を築いて簡単な屋根をのせるだけでもかまいません。簡単な構造の例を図で示しました。 このような、屋根を保持するだけの設計は、構造が簡単なだけに使いやすく管理もしやすくなります。通常の捕獲器具からの犬の出し入れが容易で、犬に怪我を負わせることもなく、作業者も安全で、建物を壊す危険もありません。犬舎は基本的には、風雨や他の動物あるいは人から、犬を守るような構造にします。 犬舎を設計する前に、その地域で利用できる施設がないかをまずは調べます。このときに、その地域の建築規定やこのような収容施設についての規定がどのように定められているか、また、運営するスタッフが留意しなければならない管理基準などについても調べます。 財政事情がゆるす範囲の最も理想的な建物は、将来的に維持費が少なくてすみ、日常の犬の世話や掃除が容易なものです。手間のかかる作業は、せずに済ませようとしたり、結局はやめてしまうことにつながります。 建物。厚さ150mmのしっかりした土台に、厚さ150mmのコンクリートの基礎を流して底面を造ります。これにコンクリートブロックかレンガを積んで壁にし、目地を平らに埋めて、できるだけ凹凸がない壁を作ります。このように壁の表面の凹凸が少ないと、洗い流すのが容易になります。表面に装飾などは必要なく(初めは)、十分に平坦であれば病原菌が増えることもありません。表面がざらざらしたブロックしか利用できない時には、セメントかしっくいを表面に塗ります。 木製の骨組みや扉枠は、犬が引っかいたり咬んだりして完全に壊してしまうので、使わない方がいいでしょう。犬舎の維持に手間がかかり、病原菌が繁殖します。怪我をしている犬にとっても危険です。 共用の運動場を柵で囲う場合は、鋭角の場所を作らないようにします。鋭角の隅があると、攻撃的な犬がおとなしい犬をそこへ追い込み、救出に入った人にとっても具合の悪い危険な状況を作り出します。 屋根は、既製の鉄製の板やヒシプレートの板を利用すれば、経済的なものができます。断熱効果のあるものを用いれば、温度調節だけでなく結露防止にもなります。板はブロックの壁に固定しますが、必要に応じて角材で小屋組を作ります。屋根が床から2m以上の高さにあれば、木材を使用しても問題ありません。

排水設備: 建築する設備によっては、犬舎の排水を地域の下水道に接続することができるでしょう。このような接続ができない場合は、犬舎の清掃排水などの水を運動場の外の溝へ導き、これをまとめて地下空間へ流し込むようにします。設備は、常に地域の衛生状態を考慮し、衛生基準を満たし、環境に配慮したものにします。ある区画の排水が隣の区画を通って流れていくような設計には決してしてはいけません。感染症が瞬く間に蔓延します。近くを流れる川に排水を直接流すのもいけません。

水: 病気を蔓延させないために必要な重要な項目です。水の供給量に制限があるようなら、犬の飲み水は上水道を使用し、掃除用の水の衛生度はそれほど重要ではないので、川や井戸の水を利用します。

寝場所: 多少なりとも犬に快適さを与えるために、寝床を一段高くしたり、使い捨てできるダンボールを置いてやったりします。使い捨てではない固定空間の場合は、空間の一面あるいは縁の一部を切って、清掃排水が流れ出しやすいようにしておきます。

長期収容犬舎: 一般市民が訪れて自分の家に引き取る犬を見てまわれる保護施設などの長期収容施設は、もう少し見栄えのよいものにしなければいけません。 このような犬は長期間収容される場合が多く、品種・体格・性別を考慮すれば数匹の集団で飼育できる犬や、相当の広さの運動場のついた区画で個別に飼育しなければならない犬がいます。 このような種々の状況に対応するためには、数種類の建物がおそらく必要になるでしょう。

図面1,2

いずれも最も簡単な設計のもので、固定された直線の壁を隣同士の区画で共有するものです。

それぞれの区画には、人が通れる大きさの一枚板あるいは鉄格子の出入り口を設けます。単に犬を収容するだけの経済的な施設で、経過観察もできません。 犬舎は平らな屋根で覆ったもので、換気用に屋根板と壁の上部の間に隙間をあけます。 小屋部分と運動場の広さはもちろん自由に設計できますが、もしそれぞれの区画の広さが変えられるような造りならば、もっと多数の犬を収容できます。

図面3

この図面は、犬を一匹ずつ世話をするための最低限の施設で、4通りの使い方ができます。

上半分の犬舎は、犬舎部分も運動場部分も、お互いが見えない壁で仕切られた完全に隔離されたもので、運動場の長さが2通りあります。 下半分の犬舎は、運動場の仕切りが金網になっており、隣の区画の犬を見たり触れたりできます。こちらも運動場の広さは2通りあります。このような配置にすると、世話をするのに必要な空間を節約できます。すべての犬の観察、餌やり、掃除を1本の作業通路から行なうことができます。 排水溝は中央の通路の地下に集め、通路の中央にある安全扉は、犬の脱出を防ぎます。 屋根は、犬舎部分と運動場(広い場合にはその一部)を覆うようにします。 広さは、もちろん状況に合わせて自由に設計できます。

図面4

図面3とたいへんよく似た使い勝手のものですが、犬舎区画は作業用通路の片側にだけしかありません。 このため、経済性の面からは劣りますが、立地条件に制約がある場合に用いることができます。 通路と犬舎、および運動場の一部に簡単な屋根をつければすみます。 共用の運動場スペースのあるものを示しましたが、この運動場スペースだけを作業用通路をはさんで反対側に設置しても構いません。この場合、作業用通路の犬舎とは反対側に出入り口が作られますが、こうすることにより他の犬舎に入っている犬から運動場を隔離することができます。このほうが具合がよい場合もあります。

円形犬舎

PARASOLは、ウッドグリーン動物施設がケンブリッジ近郊にあるキングスブッシュセンターに建設した独自の円形犬舎で、そのデザインは著作権登録されています。この犬舎は、15年以上にわたって独自の犬舎管理システムとして成功を収めてきました。従来の犬舎に比べて、犬にとって居心地のよい住処となり、作業員にかかる経費が少なく、維持費も少なくて済みます。

建築技術と改良経過

もともとは米国工兵隊が設計した組み立て式の構造物で、確保した用地へ簡単に輸送できて、良質の建物をその場で短時間に組み立てるためのものでした。加工済みの高品質の部品からなり、装飾は施しておらず、維持費もかかりません。PARSOLの最初の試作品2種は、1993年初めにエディンバラ近郊にあるスコットランドSPCAのロジアン動物福祉センターに建てられ、高い評価を得ています。

動物の保健衛生基準

PARASOLの建物は、現在入手できる動物舎の最高の品質を誇るもので、環境衛生関係者と獣医専門家が、動物の取り扱いに関する最近の研究成果を踏まえて協同で設計したものです。 イギリスの自治体が認可する動物預託施設の基準の規定に関して、環境保健局が発表した最新の衛生基準や建築基準を完全に満たしています。

PARASOLの動物収容システム

PARASOLの建物は、動物保護施設、個別収容施設、出産用犬舎、作業犬用犬舎として、今までにない新しく斬新なものです。動物の行動に関する研究と近代の工学技術がやっと融合して、理想的な動物舎が生まれました。

設計目標

  • 犬の取り扱い、掃除、餌やりを、一つの建物内で容易に行なえるような完備したシステムを作り上げる。
  • 引き取り手のない犬が、短期あるいは長期に収容されることによるストレスを少なくする。
  • 感染症の蔓延の危険が少ない、衛生的で居心地の良い環境を作る。
  • 加工済みで維持管理の容易な建築資材を近代工学の設計技術で開発し、優良な建築物を作成する。
  • 据え付けが容易で品質のそろった製品を提供するために、製造工程や組立工程を規格化する。

大きさと間取り

PARASOLシステムでは、組み立てユニットを使って、それぞれの設置場所に合った大きさと、間取りの融通の利く犬舎を作ることができます。空間的に余裕があれが、円形の建物は土地を最も有効に利用できる形であり、暖房や換気あるいは清掃作業の面からも、たいへん効率の良いものです。

標準的なPARASOLシステムは、内装を変えて猫用の施設にしたり、管理室、受付、医療設備の空間を設けることもできます。また複数のPARASOLをつなげることも可能で、連結部分には、また違った用途に利用できる空間が出現します。

組み立てユニットが融通性に富むので、標準仕様でない様々な間取りを提供できます(設計範囲内で)。ご要望をお聞かせくださればご相談に応じます。

PARASOLの標準仕様

犬を15頭収容できるPARASOLは直径が12メートルあり、中心の核になる部分を16等分された区画が取り巻きます。そのうちの1区画を中心部にある作業空間への通路にし、その作業空間から犬舎として利用する15区画に出入りします。 それぞれの犬舎区画は、内側の寝場所と外側の運動場に分かれていて、いずれも屋根があります。寝場所と運動場の間の壁には出入り口が切ってあり、開閉アシスト機能のある扉が取り付けてあります。必要に応じてくぐり戸を取り付けることもできます。 隔壁の内側は、すべて規格寸法の組み立てユニットになっており、PARASOLシステム専用に開発した防水加工した合成樹脂の板を使っています。

  • 寝場所部分と作業空間および通路区画の屋根部分は、密閉されていて暖房効率が高く、結露しない構造になっています。
  • 寝場所部分は2メートル四方の大きさがあり、必要に応じて床から一段上げた寝床を設置できます。
  • 運動場はおよそ4メートル四方で、屋外とは金属製の網や鉄格子で仕切られています。中心部区画の放射状隔壁は、この鉄格子より外側まで伸びていて、「くしゃみ感染防止柵」となります。

PARASOLの通路部分には、貯蔵庫と調理スペースが一体になった設備を取り付けることができます。この一体型システムは、作業台、流し台、電熱式温水器、照明器具、給水口を装備しています。 気候や天候に合わせて調節できる冷暖房設備が完備しています。屋根の先に設置された換気扇からは、中心の作業スペースと各犬舎スペースに新鮮な空気を取り込むことができます。1時間に16回空気を入れ替える換気能力があります。各犬舎に換気口があるため、空気感染する病気の防止にはきわめて有効です。 PARASOLは、排水構造を作った上で表面に滑りにくい防水加工を施した鉄筋コンクリートの土台の上に組み立てられます。 全く一からの施工も請け負いますが、予め用意された土台の上に誰にでも簡単に組み立てられるセットを「平たく」梱包してお送りもします。イギリス国内外での組み立ての指導も行なっています。 

PARASOLの利点

独特な設計の円形PARASOLには、従来の犬舎よりも数多くの利点があります。 円形にする事により通路が不要になり、中心部の空間から作業者一人が効率よく犬の世話をすることができます。 予め排水設備が用意され、床や壁の表面に防水加工を施してあるため、衛生管理が楽です。給水用のホースの接続口も用意されています。PARASOLは、作業労力を減らし、維持経費を大幅に節約できるよう設計されています。 これまでの実績では、基本的な清掃と餌やりに要する時間は、15の犬舎が直線状に配置された建物で行なう場合の半分以下になり、これにより人件費が削減できる上、作業員が犬の相手をしてやる時間が増えます。 建物が円形だと、隣の犬が見えないので関心が薄くなり、犬が受けるストレスの程度も軽減されます。また、外壁が曲線なので、建物への人の出入りも見なくてすみます。 この結果、犬は落ち着き、騒ぐ程度も大幅に減るので、従来の犬舎よりも騒音がずっと少なくなります。隔壁と屋根による防音効果に加え、外縁にある運動場スペースにも防音効果が期待できます。 高品質の建築素材を用い、組み立てユニット式になっていることで、建設時間や経費を節約できるとともに、外装や内装などの体裁を整える必要もなく、完成後の維持管理の心配もいりません。設計耐用年数は25年です。 イギリスでは、犬舎の持ち主が責任を負うべき犬舎の管理についての基準が厳しくなる傾向にあります。PARASOLは、このような基準を満たすよう(あるいはそれを上回るよう)設計されており、高価な設備を追加する必要は全くありません。 PARASOLに標準装備されている暖房設備と換気システムは性能がよく、費用に対し高い効率が得られます。長方形の建物に同じような換気システムを設置しようとすると、高価な排気管を張り巡らせ、各犬舎に換気扇や暖房装置を取り付けなければなりません。

建築計画

最初に全体的な計画を策定して、これに細部の計画を組み込んでいくようにすることを強くお勧めします。あらかじめ考慮に入れることとしては、以下のようなものがあります。

  • 候補地の立地条件や物理的状態(過去の用途、既存の建物の有無や過去の業務形態、交通手段、実際の利用者や見学者の居住地からの距離)。
  • 将来的な展望(既存の施設の増改築が可能な空間の有無、増改築に対する法的規制の有無、視覚・景観的な問題、不要な設備の撤去)
  • 用意したい施設が資金を調達できる種類のものであるかどうか(助成金が利用できるか、投資効果の評価)

最初にこのような見積もりを行なうと、設計目的や財政的展望が明確になり、当座のあるいは将来的な事業展開がしやすくなります。

次に予算を立て、設計の概要を決めますが、建物の位置、形、入り口の位置、排水構造などについて設計事務所や排水設備の専門家と相談するために、現地で実際の調査を行ないます。この過程を踏めば、どんな設計でも十分な検討を加えることができ、無駄な出費をせずに納得のいく設計ができます。この後、次のような最終的な計画を立てます。

  • 当面の、および将来的な使用目的を視野に入れた全体的な配置設計
  • 建設の財政計画、予算の見積もり、収益や補助金申請先の特定
  • 将来的な業務拡大も視野に入れた設備の準備(給排水、電力供給など)
  • 使い勝手がよく好感のもてる玄関、受付、事務所、屋外通路、駐車場の設計
  • 好ましい外観、植樹、案内板や照明の配置

ご要望があれば、「設計と建設」をすべて組み込んだプランも用意いたします。これには、事前の費用見積もりや現地調査、イギリス国内の関係行政当局との相談や交渉についての支援も含まれます。

設計仕様と技術データ

設計分類/法的規制

PARASOLは、環境省が動物収容施設に関する専門調査委員会を通じて1993年発表した推奨規定に準拠したものです。 製造基準は1987年英国基準BS.5502の第22項に合致し、農業分野2類の用途に分類されます。 イギリスでは、地方自治体からの建築許可が必要で、排水設備の認可もNRAから受けなければなりません。

全体の寸法/立体構造

 床面積:113平方メートル 直径:12メートル(16区画) 中心部分の作業区画:15.3平方メートル 入口部分:5.92平方メートル(1区画) 寝場所:一区画2.14平方メートル(15区画) 運動場:一区画3.78平方メートル(15区画) 

設計仕様/維持管理

冷暖房設備はBS.5803とBS.5608に合致し、防音設備はBS.2750の第1項とBS.5821の第1項に合致します。維持管理は特に必要とせず、耐性年数は30年から50年です。

犬舎や作業車内への病気の持ち込みや感染拡大を防止するための手順

動物福祉と同時に、財政上の制約あるいは物理的な制約を配慮した実際の運営手順は、中心になる獣医と施設管理者が相談して決定していきます。理論的には評価の高いシステムでも、実際の運営に支障をきたすようでは意味がありません。 その際には、以下のような項目を検討します。

1.施設に収容する犬の選別

施設に収容するのが好ましくないために安楽死させるべき犬についての、確固たる選別基準を作成します。好ましくない犬としては、とても年老いた犬や病気の犬、および他の収容犬や作業者の健康を害する危険のある犬が含まれます。選別は、獣医による検査だけで済む場合もあれば、血液検査や培養検査を行なう場合もあります。

2.病気の予防

施設収容時に、予防接種、寄生虫駆除などの病気予防を必ず行なうようにするのが無難でしょう。

3.隔離場所の準備

新たに施設に収容される犬は、伝染病にかかっていない事がはっきりするまで、密閉された檻で個別に飼育するのが理想的です。収容期間は、問題となる病気の種類に応じて決めます。

4.一般的な衛生

床や建物には、掃除や排水が容易で、水を通さない素材を使います。作業員には、ゴム長靴や、着やすいけれども手軽に洗濯や消毒ができる保護服を支給します。要所には、消毒液を張った靴の消毒容器を用意します。使用済みの犬舎は念入りに消毒して乾燥させ、可能ならば数日間あけて再使用するのが理想的です。

5.餌の保管、調整、給餌

餌は、ネズミを防止できる密閉容器に入れ、細菌やカビが繁殖しない温度と湿度条件で保管します。 給餌の際は、犬同士の病気感染が起きないように気を付けます。給餌用の容器は、使用後に念入りに洗浄し、できれば消毒します。

6.空気感染する病気

空気感染するウイルスの蔓延を防ぐためには、一つの空間で多数の犬を飼育することは避け、十分に換気をし、温度と湿度の調節をします。

7.伝染病が発生したときの対処方法

様々な予防手段を講じていても、伝染性の病気が発生することがあります。このような事態に対処する方法を作業員全員で取り決めておくことが重要です。

8.作業員の教育

作業員全員が病気の伝播経路や対処方法についての基本的な知識を持っていることが必要です。特に、動物、作業員自身、他の作業員へ病気を伝播する危険は、作業員一人一人の衛生管理によって回避できることを認識していなければなりません。 



犬の捕獲方法

必要に応じて犬を落ち着かせるようにし、自信に満ちた態度をとります。


  • ゆっくり犬に近づきます。急に動いてはいけません。
  • 犬に話しかけて安心させます。
  • 危険がなさそうなら、手の甲を差し出して臭いをかがせます。
  • 少量の餌を何か与えます。
  • 優しく犬を触るか、なでるかして、自信のある態度を示します。
  • 首輪をしている場合は、頭の後ろの部分に手を掛け、首輪にリードを通します。
  • 首輪を付けていない場合は、スリップリードを頭から通せるかどうかを試します。
  • 輪の部分を十分に大きくとり、犬の耳に引っかからないよう気を付けます。
  • 優しくリードを引き、人の命令を聞くか試します。
  • 餌を仕掛けた檻に入るか試します。
  • 以下のものを使ってみます。
    *投げ網 *追い込み網 *柄つき網 *捕獲棒   
  • 発情期の雌犬を使っておびき寄せます。(安全な方法)
  • 最終手段として犬を追いつめて捕獲します。その際、攻撃されて怪我をしないように、捕獲する犬の大きさに見合った保護服を着用するまでは犬に近づいてはいけません。このような場合は、攻撃される危険が大きいと思ってください。できれば一人ではなく、複数の人数で捕獲します。

どうしても捕獲しなくてもよい場合には、犬を逃がしてやります。そのうち捕獲できるときが必ずあります。

犬に攻撃された時の対処方法

犬に攻撃されるような状況におかれた場合には、飼い主がいない場合でも飼い主が犬に攻撃するようにけしかけた場合でも、以下のような対処をすれば防御効果があがるでしょう。

  • 犬と正面から向き合い、犬がどこから攻撃してくるのかを見極めて防御体制をとります。
  • 以下のようなものを手に持っていたら、何でも構わないので、犬が攻撃をしかけてきた場所にあててこれを咬ませます。
    • *杖
    • *クリップボード
    • *かばん
    • *傘
    • *ラジオ
    • *懐中電灯
    • *新聞紙
    • *道具箱
    • *コートやその他の衣類を腕の周りに巻く。
  • 手ぶらだったり、突然攻撃されて時間的な余裕が無い場合は、犬に自分の片方の腕を攻撃させます。
  • 脚は咬まれないようにします。もし倒れると、顔を咬まれることもあります。
  • 犬が大きくて重い場合、犬が体当たりしてきても倒れないよう身構えます。
  • 犬が咬みついて放れない場合、次のようなことを試します。
    • *大声でどなりつける
    • *大声で助けを呼ぶ
    • *膝で犬の胸を蹴る
    • *鼻づらをなぐる
  • 犬が咬みついてすぐに逃げた場合は、どのような犬だったかを記憶し、飼い主がそばにいる場合には、飼い主の容姿も記憶します。
  • どこの家に飼われている犬なのかを確認します。
  • その場を離れます。
  • 傷の治療を受けます。

以上の対処方法では、犬を傷つけたり殺すことを勧めていません。犬を傷つけたり殺したりすると、その行為が人命救助に関係していたことを証明しなければならず、その結果、訴訟に巻き込まれることもあります。

狂暴な犬や野犬への対処方法

  • 犬に近づいてはいけません。
  • 犬を追い詰めないようにし、犬が逃げられる余地を残しておきます。
  • 急な動きをしてはいけません。
  • 犬が自分のなわばりとみなしている領域から撤退します。
  • その際、ゆっくりとあとずさりし、背中を見せてはいけません。
  • 犬から目を離しません(目の端に犬を捉えておくようにします)。
  • 決して正面から犬を見据えてはいけません。まっすぐににらむことは、敵対心を示します。
  • 大声で叫んで犬を興奮させてはいけません。
  • 腕を振り回して犬を興奮させてはいけません。
  • 犬の所有物(骨、餌の皿、子犬等)を手に取ってしまった時は、それをその場に置きます。
  • 扉があれば、自分と犬を隔てるように閉めます。
  • 犬のなわばりから出ると、攻撃してくる事はありません。
  • 飼い主が来たら、犬を適切に制御するよう要求します。

犬との対峙方法:いくつかの接近方法

犬の観察

数分の間、犬を観察します。緊急でない場合は腰を下ろします。調査用紙に記入していれば、犬に近寄るために必要な時間がかせげます。優しく親しみをこめて話しかければ、犬もあなたに慣れてきます。要領よく事を運ぼうとしたり、犬を騙したりするよりも良いでしょう。まずは、焦らないことです。

周囲の観察

現場の様子を観察します。犬が驚いたり怯えたらどの方向へ逃げるでしょうか。犬を追い込んで捕獲しやすくできるような建物や庭が近くにあるでしょうか。危ない道路や鉄道、川などが近くにありませんでしたか。 犬に対して適当な位置関係をとれば、臆病な犬ならばたいてい、壁や垣根や塀などに沿って捕獲しやすい場所へ追い込むことができます。

ゆっくり接近する

犬が逃げたり、離れていくようなら、すぐに動きを止めます。食べ物でおびき寄せる事も可能ですが、緊張状態にある犬が見知らぬ場所で餌を食べることはめったにないことを覚えておいて下さい。十分に犬との距離が狭まれば、犬の首にかけるのが簡単なスリップリードで捕獲しますが、軽い素材のリードは頭を通す輪を作りにくくて役に立たないことが多いので、できれば硬い弾力性のある素材のものを使います。

扱いにくい犬

なわばり防衛

犬が決まったねぐらを持っている時にはねぐらを守ろうとします。このような場合には犬をねぐらから追い出して離れた場所へ誘い出せば、攻撃性が低下します。

足首への咬みつき

小型のテリアやコリーの中には、足首や足先に向かってくるものがいます。分厚い毛布のようなもので足を保護して下さい。犬が小さい場合は、犬の上から毛布を被せてそのまま包んで運びます。

とても狂暴な犬

万全の準備を整えてから捕獲の体制に入ります。事前に狂暴な犬だとわかっていれば、補助をしてくれる人を連れて行きます。現場についてから狂暴な犬だとわかった場合は、犬を捕獲するときに防御として使える箒や軽いイスなどを手に持ちます。このように狂暴な犬を捕獲したときにはリードは2本使い、両側から引くようにします。 大きくて狂暴な犬に、口輪をはめようとしてはいけません。

ケガをしている犬

地元の獣医の協力が得られるようなら、獣医に詳細を知らせて対処方法を相談します。相談できる獣医がいなければ、歩けるよう応急処置を施しますが、傷を負っている動物は痛みを感じると咬み付くことを忘れないで下さい。

常に犬の顔を見ながら行ないますが、目を覗き込まないよう気を付けます。犬は当然警戒しているので、いつ噛みついてもおかしくありません。捕獲したら、できるだけ早く車か木箱に入れます。スリップリードのままでは様々な不都合が生じるかもしれないので(例えば窒息、リードの絡まり、犬の上にかがんだときにリードがはずれる)、できれば普通のリードと取り替えます。

犬の持ち上げ方、処置方法

  • 自分自身と犬の双方の安全を考えます。
  • 咬まれないように、まずは口輪を装着します。
  • 犬を置く台が、安定していて安全であることを確認します。
  • 片方の手で首輪を持って動けないようにし、もう片方の腕で抱きかかえます。犬の腹部には手や腕を回しません。傷の程度がひどくなることが多いからです。

持ち上げる準備

  • 台の上に乗せたら、動けないようにします。
  • 犬に話しかけて落ち着かせます。

検査と投薬のための犬の拘束方法

以下の5つの方法があります。

1. 台の上にのせた犬(方法1)
  • 犬の背側に立ちます。
  • 首輪を耳のすぐ下で両側からつかみます。このとき、つかんだこぶしの手のひらの根元を犬の首に押し付けます。
2.台の上にのせた犬(方法2)
  • 左腕を犬の首にまわします。
  • 右側の肩をしっかりと抑えます。
  • 犬を抱きかかえます。
  • 右手で犬の後ろ足を抑えて座る姿勢をとらすか、後ろ足の後方から腹の下へ右手を回して犬を立たせた状態にします。
3.横向きに寝かせる
  • 犬の脚が向こう側にいくように倒すつもりで持ち上げ、台の上で少し下ろすと同時に横に倒します。
  • 上半身で覆いかぶさるようにし、胸で犬を台に押さえつけます。
  • 2人目の人が、片方の腕を首の上から下側になった前足つかみ、もう片方を腰の上から下側の後ろ足をつかみます。
4.仰向きに寝かせる
  • 3と全く同じですが、もう一人が犬の背中を支えます。
5.静脈注射
  • 左腕を犬の首にまわします。
  • 右側の肩をしっかりと抑えます。
  • 犬を抱きかかえます。
  • 右手で犬の後足を折らせて座る形でとらせるか、後から後足の下へ手を入れて犬を立たせた状態にします。
  • 静脈を確保するために、手のひらと親指で犬の肘にあたる部分をしっかりつかみます。
  • 橈骨(肘と足首の間にある2本の骨の外側)を押さえて、静脈を圧迫します。
  • 他の方法として、ゴム製のチューブで肘の上を縛る方法もあります。チューブの位置がずれないように、ピンセットを使ってもよいでしょう。
  • 小型犬の場合はうなじを抑えないように注意します。このタイプの犬の中にはそこを押えると眼球が突出する危険のある品種もあります。


ダンディー地区対策委員会
環境衛生局

City of Dundee District Council
1 Shore Terrace, Dundee, DD1 3DB
Tel:44 382-434000 Fax:44 382-434830

野良犬‐ダンディー地区での避妊手術推奨キャンペーンの効果

ダンディー地区対策委員会が行なった避妊手術推奨キャンペーンが、野良犬問題にどのような効果を及ぼしたかということについてのお問い合わせ(1994年6月7日の手紙)をありがとうございます。

背景

1970年代になると、ダンディー市(人口およそ18万人)の郊外には、他の市と同じように大きな住宅団地ができました。ところが、野良犬が増えてきたとみえ、住民の苦情の多くは、野良犬が引き起こすいろいろな問題に関するものでした。

自治体は、問題を解決するために、環境衛生局に野犬捕獲員を2人配置することを決めました。

野犬捕獲員は1981年6月に配置され、やがて年に2500匹の犬を捕獲するようになりました。

問題

野犬捕獲員が熱心に犬を捕獲したにもかかわらず、状況は1980年代を通じて変わりませんでした。捕獲される野犬の数と、犬の収容施設に持ち込まれる引取り手のない犬の数の合計は、1982年の2600頭から1988年の2400頭へとわずかに減少しただけでした。

頭数は減少したものの、困ったことに、殺処分になる犬の割合は、1982年と同じ33%のままでした。収容施設に連れてこられる犬のうち、450頭は生後6ヶ月以下の仔犬で、この50%は殺処分になりました。

解決

このような状況を踏まえて、対策委員会は以下のことを決定しました。

  • 避妊手術の実施。委員会が収容した犬のうち里親がみつかった雌犬については、すべて委員会が費用を負担して避妊手術を行ないます。
  • 委員会が収容した犬を、その飼い主が引き取りにきた場合は、雌犬なら避妊手術を受けるよう説得します。手術の手配や費用は、委員会が負担します。
  • 野犬捕獲員は、「問題のある」飼い主を含めた市内全域の雌犬の飼い主を把握します。特に、貰い手のない子犬を常時「反復出産」する雌犬に焦点をあてます。そして、委員会が費用を負担する避妊手術の手配をします。実際には、雌犬を獣医に連れて行き、また引き取って飼い主に送り届けるということまでしました。

犬の収容施設では、「犬のため」の現金寄付を常に受け付けました。このような寄付金は、すべて避妊手術「基金」として処理し、それぞれの寄付者に、何に使われたかについての報告が委員会から行くようにすることに決められました。寄付金に対するこのような姿勢をとった結果、寄付金が増加し、避妊手術運動が継続していく原動力になりました。

結果

結果は目を見張るものでした(添付資料参照)。野良犬は激減しました。野良犬が群れをなして住宅街をさまようような事態は過去の出来事になりました。委員会の犬対策担当者(以前の野犬捕獲員)は、啓発的な活動に時間を割けるようになり、責任ある犬の飼い方についての意識の普及に努めています。

今後

委員会では、運動をさらに広げていこうとしています。例えば、雄犬の去勢、マイクロチップを用いた個体識別(避妊手術を受けた雌犬にはすでに埋設されています)、寄生虫の駆除運動などです。

以上の情報がお役に立つ事を願っています。さらに詳しい情報が必要な場合は、御気軽にご連絡下さい。

 環境衛生局長 

1983年 1988年 1993年 1998年
犬の回収数 2526 2314 1390 948
犬の処分数 642 866 181(1) 82
飼い主への返却数 1163 791 571 380*
里親による引取り数* 662 542 649 464
子犬の回収数 データなし 447 73 21
子犬の処分数 データなし 232 5(2) 1
*推定値
(1) 老犬、衰弱した犬、慢性的に病気、委員会によって人に危害を加えると判断された犬
(2) すべて病気


避妊去勢に関するFECAVA指針(1998年11月)

  • どんな野良犬対策においても、効果的な避妊去勢の実施が必須だと考えられますが、この他にも、啓発、登録制度、個体識別制度も重要なので、検討していかなければなりません。
  • 通常の外科的処置では、雄犬の場合は睾丸、雌犬の場合は子宮と卵巣を摘出します。獣医によっては、卵巣のみの摘出でよいとする人もいます。雌犬の避妊手術では、切開箇所(正中線に沿って、あるいは側面から)は、それぞれの獣医の判断と好みにまかせてよいでしょう。
  • 避妊去勢を行なう時期が、性的成熟前が良いのか後が良いのかについては、FECAVAでは見解の一致が得られていません。公に報告されているそれぞれの利点、弊害を考慮した上で、獣医と飼い主が相談して決めてもよいのではないでしょうか。
  • 頭数を減らすことが最優先事項である場合は、性的成熟前の避妊去勢が適当であると考えられます。
  • 性的成熟前に避妊去勢を行なう場合は、麻酔、手術テクニック、回復方法の体制が整っていれば、生後7週間でも構わないと考えられます。
  • 避妊去勢は、適切な麻酔技術と手術テクニックを必要とする外科的処置です。このような基本的な体制が整っていなければ、外科的処置をするべきではありません。
  • 避妊去勢計画では、可能な限り地元の獣医やその関係者との連携をとります。

外科的処置に関するFECAVA指針(1998年)

ヨーロッパでは、国によって習慣も文化も異なることは周知のことで、このため、外科的処置について広く意見交換をするのは難しい状況です。

1997年11月にFECAVAに提出された討議資料では、以下のような働きかけを提案しています。

  • 各国の関係行政団体は、その国で現在許可されているすべての外科的処置それぞれについて、動物に与える苦痛、およびその処置を施した結果得られる効果についての検討を行ないます。
  • 意味の無い外科的処置だと認められたものについては、法律による規制が行なえるように働きかけます。
  • 国際的には、各国の合意が得られる処置を絞り込み、「地域ごとの法規制」の実現を働きかけます(ヨーロッパの場合)。
  • 見解の一致がみられない場合は、それぞれの見解を尊重します。しかし、国によって異なる状況については、今後の展開に継続的に気を配り、科学的なデータを蓄積します。
  • 国際的な動物福祉団体や動物繁殖に携わる関係団体と連携をとり、啓発資料を提供していきます。これからペットを飼おうとしている人に、動物の本来の習性について知らせることは、たいへん意味がありました。
  • 一般市民への啓発なしに立法だけを急いでも、効果があがりにくいことを覚えておきます。

FECAVAに所属する団体の調査結果と、1998年5月26日に開かれたFVEの動物福祉に関する委員会における討議から、次に挙げる外科的処置は意味の無いものであり禁止すべきであるとのおおまかな方向が示されたといえるでしょう。

  • 犬の耳の切断
  • 猫の耳の切断。ただし、捕獲された野生猫や野良猫に避妊去勢を施して再度放す際に、個体識別の手段として行なわれる場合を除きます(耳の切断と呼ぶよりも、「耳による個体識別」と呼んだ方が抵抗が少ないでしょう)。
  • 犬の声帯切除
  • 猫の爪切除
  • ケガや病気の処置以外を目的とした犬の尾の切断

犬と猫の避妊去勢、および遺伝的障害を矯正するための外科的処置の実施は必要であるということについては、完全な合意が得られました。後者の処置については、矯正手術を行なう際に避妊去勢も実施するべきであるという提案があり、この提案に対する支持もありました。 また、動物実験については、適切な規定があれば認められることになりました。 子犬のオオカミ爪の除去については、まだ論議中です。除去がすでに禁止されている国、およびまだ禁止されていない国のそれぞれから、効果を比較できるデータが報告されることが必要です。


FECAVA見解 人に危害を及ぼす犬について(1998年)

決定事項の要約:

  • 人に危害を及ぼす犬を飼うことはやめるよう強く働きかけていきます。人の社会では、安全な生活が何よりも優先されます。ですが、どんな対策をとるにしても、このような危険な犬自体については、動物福祉の観点からの処遇が必要です。
  • 人に危害を及ぼす犬についての問題が増えている原因はいくつも考えられます。犬の血統や品種、不当な目的で行なう犬の調教やしつけ、飼い主の認識不足あるいは啓発不足、あるいは、地域によっては社会的背景などの原因が考えられます。
  • 闘犬用に改良された品種は確かにありますが、飼育できる品種を定めた法律では人に危害を及ぼす犬の飼育を規制するのは難しいことがわかっています。口輪の着用や、つないで飼うことを義務付けている法律もありますが、人に危害を及ぼすからという理由で殺処分を強制するのも厳しすぎるでしょう。
  • 人に危害を及ぼす犬になりやすいのは、闘犬や戦うことを目的とした競技のために品種改良されたり調教される場合です。危険な犬の取り締まりは、まずは、このような飼育に対して行なわれるべきでしょう。現行の法律は、ほとんどが犬の虐待、動物福祉に関係したものです。このような法律の意義はもちろんありますが、闘犬の禁止なら、裁判所にとっても適用は容易で、規制をするのはたやすいと考えられます。
  • 人に危害を加える犬を取り締まる法律がまだない国に対しては、制定するよう働きかけます。
  • 法律があるなら、それを有効に実施していくことが必要になります。これには、犬を所有しているかどうかを十分に把握していると(つまり犬の個体識別と登録が徹底していると)、実施していくのが容易になります。
  • 人道的なしつけ方法の講習会を、必要に応じて開きます。
  • 犬を飼うことの責任を説いていくことは極めて重要です。これには、犬のしつけ、個体識別、登録などの手続きも含まれます。
  • 闘犬が盛んに行なわれるような社会的、経済的に問題を抱えた地区や人の集まりに対しては、社会的、経済的援助をしていくことも考えていかなければなりません。

「ペットの尊厳を守る」キャンペーンは、ペットの飼育状況や取り扱いを改善していくために、WSPAが全世界で展開する活動です。 以下の資料では、野良犬や野良猫を対象とした人道的な対策や、できるだけ少ない経費で医療処置を行なうための手段を紹介しています。動物福祉に関係する団体ならば、いずれも無料で利用できます。

ビデオ

* 動物対策担当官(Animal Control Officer)

人道的な野良犬・野良猫対策を実施する際の動物対策担当官の役割の概要を解説し、動物の人道的な捕獲方法や取り扱い技術を紹介します。

* 猫カフェ(Cat Café)

猫カフェとは、野良猫に餌をやって飼うために、ホテルなどの厨房や飲食店から離れた場所にしつらえた空間です。

* 猫の飼い方と繁殖対策(Cat Care and Control)

捨て猫や野良猫が引き起こす問題、効果が薄い対策により生じる被害、および動物に与える苦痛に焦点を当てています。効果があがったさまざまな人道的対策を、世界中から集めた実例を示しながら解説します。

* 野良犬・野良猫対策(Establishing A Stray Control Program)

野良犬や野良猫対策の実施初期の状況を解説します。新しい対策を導入して、それを普及させるためには、行政担当者、獣医、警察、マスメディア、動物保護団体、一般市民、すべてが参加することが求められます。

* 犬の人道的な安楽死(Humane Euthanasia for Dogs)

このビデオにはナレーションがありませんが、さまざまな国で行われている人道的な犬の安楽死の方法を紹介しています。

* イスタンブールのバス動物病院(Istanbul's Bus Hospitals)

イスタンブールの中心地に、バスを改造して作られた動物病院があり(あまり理想的とはいえませんが)、そこで行なわれている効果的な動物治療を紹介しています。この事業は、WSPAの「ペットの尊厳を守る」キャンペーンの一貫として支援されています。

* ラム&ファザ島の猫病院(Lamu & Faza Cat Clinics)

このビデオにはナレーションがありませんが、効果的で人道的な野良猫対策ならば、自動車もなく立派な施設もない島でも十分に効果を発揮することを紹介しています。ラム島とファザ島は、ケニア沖の島です。

* 犬と猫の避妊去勢技術(Neutering Techniques for Cats and Dogs)

犬と猫の避妊去勢技術を習得しようとしている獣医のための手引です。性的成熟前の避妊去勢も含む手術手順を詳細に紹介しています。

* 突発的事態や災害時にペットを守る方法、および畜産業者が災害に備えてすべきこと(Plan to Protect your Pets in case of Emergency or Disaster & Disaster Preparedness for Livestock Owners) 

WSPAの加盟団体であるアンティグア&バービュダ島動物愛護協会が作成しました。WSPAを通じて入手できます。

* 野良犬対策(Stray Dog Control)

交通事故、咬傷事故、野犬の家畜襲撃、糞の処理問題、衛生問題の点から、野良犬が引き起こす問題、それによって犬が被る不幸、効果の薄い対策が生み出す目に見えない被害について考えます。そして、どのようにしたら効果的な対策を導入できるのかを、世界各地の例を紹介しながら解説します。

パンフレット

* 動物対策担当官(Animal Control Officer)

人道的な野良犬・野良猫対策を実施する際の動物対策担当官の役割の概要を解説し、動物の人道的な捕獲方法や動物を扱う際に有用な道具を紹介します。

* 動物の安楽死(Animal Euthanasia)

さまざまな安楽死の方法を解説し、人道的な方法と非人道的な方法とを比較しています。

* 猫の飼い方(Care of the Cat)

子供にも大人にもわかる一般的知識。

* 犬の飼い方(Care of the Dog)

子供にも大人にもわかる一般的知識。

* 猫カフェ、使い方(Cat Café & Manual)

猫カフェとは、野良猫に餌をやって飼うために、ホテルなどの厨房や飲食店から離れた場所にしつらえた空間です。

* 猫の飼い方と繁殖対策(Cat Care and Control)

政府、地方自治体、獣医、動物対策担当官、動物保護団体が、効果的で最新の野良猫対策についての理解を深めてそれを実現させていくのを助けます。

* 動物福祉の考え方(Concepts in Animal Welfare)

獣医を養成する教育機関で動物福祉について教えるときに役立つ事例集。

* 動物保護団体を設立してみよう(Establishing an Animal Protection Society)

啓発活動、キャンペーンの方法、行政への働きかけ方、一般市民との連携のとり方、マスメディア対策、必要な施設や世話の仕方、などについてのすぐに役立つ情報を盛り込んでいます。

* 動物保護施設の設計と運用(Planning and Running an Animal Shelter)

動物の保護預かり所を立ち上げて運営するために必要な実務と専門技術を解説しています。

* 野良犬対策(Stray Dog Control)

政府、地方自治体、獣医、動物対策担当官、動物保護団体が、効果的で最新の野良犬対策についての理解を深めてそれを実現させていくのを助けます。

* 避妊去勢の重要性(The Importance of Neutering)

犬や猫に避妊去勢を行なうことの重要性と利点をまとめてあります。

「ペットの尊厳を守る」キャンペーン用に定期的に改訂される資料については、



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